需給マッチング適用例/ネット求人情報サービス業

0.リアルタイム求人/求職サービスとして

Dasieを一言で表すと、『需給情報のマッチングエンジンをコアとした情報交換システムであり、需要者と供給者が提示する取引要件について時間軸を中心にマッチングし、それぞれの要件に適した相手情報およびリコメンド情報を双方に伝えることによって需給計画の策定や取引を支援する仕組み』と言うことになりますが、需給情報のマッチングというあまりにも一般的なテーマであるが故に、どこがユニークで、どのように利用したらどのようなメリットが生まれるのか、イメージがし難いと思います。

そこで、求職者(供給者)、求人企業(需要者)、求人情報サイト(仲介者)、というように関係者の役割が明確で、取引要件がシンプルであり、かつ時間軸が重要なファクターであるネット求人情報サービスへの適用を例とすることによって特長をうまくお伝え出来るのではないかと考えました。

Dasieの重要な特長である『時間軸を中心としたマッチング』によるメリットを表現するため、リアルタイム求人/求職サービスと名付けました。

以下に、ネット求人情報サービス業における全般的な課題に対する、当システム適用による課題解決のアプローチとその効果、および実装イメージについてご紹介します。

1.ネット求人情報サービスにおける現状の課題

いかに多くの顧客をサイトに誘導し、いかに長期の継続利用を実現するか?

これはインターネット上でサービスを展開する企業にとって最重要テーマであり、広告による認知度向上で顧客誘導数の増加を図り、コンテンツのユーザビリティ向上やメール配信、SNS等による関係維持施策で顧客の継続利用を図るということが一般的な取組となっています。

中でもサイト訪問によって獲得した能動的ユーザーをメールによる継続的なアプローチで繋ぎ止めるという、プル型マーケティングとプッシュ型マーケティングを組合せる手法が定番となっていますが、この方法はプッシュの仕方によっては繋ぎ止めどころかユーザー離れの原因となる場合があるため注意が必要です。

受信を許諾したユーザーに対してサービス側は様々な情報を継続的に配信することで関係維持を図りますが、ユーザーの要件は受信許諾した時点から経時変化する蓋然性が高いため、登録時の属性に基づいて一方的に送られるプッシュメールは徐々に受容性が低くなり、やがては迷惑メールとしてゴミ箱仕分となり、場合によっては登録解除の原因ともなりかねないのです。

ネット求人情報サービス業界においても多くの求人情報サイトが登録者のレジュメを元とした適合案件のプッシュ配信を行なっていますが、多くの場合が登録時からメンテナンスされていない静的属性を元にしたマッチング結果によるものであるために、現時点のユーザーの要望や都合とマッチせず、その結果受容性が低下するケースが多いようです。

加えて、求人側が提示した要件を求職側が選択し応募するという一般的なスタイルのネット求人広告モデルでは求職側の要件提示による対等な交渉の機会がないため、ユーザーエクスペリエンスの観点からも検討の余地がありそうです。

また、働き方の多様化や人材の構造的流動化が進む今日、これに適合したサービスを実現するためには求人側と求職側の交渉要件に時間軸を加味したインフラが必要です。

このような背景を踏まえ、求人側、求職側、サイト運営側三者における課題をまとめました。

求人側における課題 ~応募ありき、受動であることによる問題~

・求職者からの応募を待つ受動的なアプローチのみで能動的アプローチの機会がないため、人材必要時の即時対応が困難

・採用目標の達成見通しが求職者からの応募結果次第であるため、広告掲載コストの費用対効果や採用目標未達リスクが測りにくい

・検索やマッチングの要件に時間軸がないため、採用計画やシフトスケジュールに連携した募集が出来ない

求職側における課題 ~情報過多と時間軸欠落による問題~

・求人情報が膨大であるため案件探しに手間がかかり、必要な情報に辿り着けない可能性がある

・最新のニーズを反映しない案件情報が一方的に配信されることにより情報過多となり、必要な情報が埋没して得られない可能性がある

・検索やマッチングの要件に時間軸がないため、スケジュールに連携した応募や複数の案件を組合せた応募が出来ない

サイト運営側の課題 ~コスト肥大化と訴求力低下による問題~

・プル型メディアの特性として消極的求職者の掘り起こしが困難

・新規求職者獲得のための広告コストの肥大化によって利益が圧迫されている

・サイトの機能追加だけでは競合との差別化に限界があり訴求力に欠けるため既存求職者の継続率維持が困難

・プッシュメールの購読解除を契機とした既存求職者の解約が増えている

・新規求人者獲得のための営業コストの肥大化によって利益が圧迫されている

・既存求人者の継続的な掲載に繋がる訴求力に欠けるため売上が伸びない

2.Dasieによる課題解決アプローチと各者のメリット

Dasieの主要機能である需給情報マッチング/配信機能をベースとしたリアルタイム求人/求職サービスと、需給情報統計機能をベースとした求人/求職動向インデックスカレンダー、この二つのサービスの組合せによる課題解決のためのアプローチの概要と、その結果得られる効果とメリットについてご説明します。

リアルタイム求人/求職サービスによるアプローチ

リアルタイム求人/求職サービスは、求人側と求職側双方のマイページに用意されたスケジューラーの該当期間にスケジュール設定の感覚で求人/求職要件を入力することにより自動的にマッチングリクエストがされ、時間軸を中心としたマッチングによって両者の都合に沿った相手情報及びリコメンド情報をリアルタイム配信するサービスです。

1.任意の期間、任意の時間帯のスケジュール枠内で求人/求職マッチング要求ボタンをクリックすることにより要件入力フォームを呼び出し

2.要件を入力しスケジュールを完成させることでマッチング要求を自動リクエスト

3.マッチングの結果該当する相手が存在した場合、リクエスト発信元のスケジュール枠をメールボックスとして適合度順に該当情報を提示

4.マッチングの際に近似値条件を許容する設定としておくことで、要件に合致する候補がなかった場合でも近似候補を提示

5.提示された相手候補の中から最適な候補に対してオファー

6.求人側/求職側の一方からオファーがされ受けた側が承諾するか、求人側/求職側双方のオファーが一致することによりマッチング成立、申込手続きへ処理を渡す

求人側メリット

・シフト組で発生した不足時間について自動で求人リクエストする事により、シフトの隙間を埋めるリアルタイムでタイムリーな求人を行うことが可能

・シフト管理サービスと組合せることで既存人員の配置と不足人員の補充を自動で行うことが出来るため、さらに隙間のない完璧なシフト管理が可能

求職側メリット

・スケジュールの空き時間について自動で求職リクエストする事により、スケジュールの隙間を埋めるリアルタイムでタイムリーな求職を行うことが可能

・時間帯や曜日によって希望する職種を変えて複数リクエストをすることが出来るため、生活に合わせた柔軟なワークスタイルの確立が可能

求人側/求職側共通メリット

・マッチング結果はリクエスト時のスケジュール枠をメールボックスとして配信されるため、送受信情報の直感的で効率的な管理が可能

・マッチングの際に近似値条件を許容する設定とすることにより要件に合致する候補がなかった場合でも近似候補の推薦を受けることが出来るため、より柔軟な案件探しが可能

・スケジューラーをUIとすることにより、スケジュール調整の感覚で求人/求職オファーが可能

サイト運営側メリット

・対求人者(クライアント)側面でのメリットとしては、当システム利用によるリアルタイム求人を行うためには事前に時間軸以外の固定的な掲載内容を取決めて契約することが前提となるため、長期間の継続的な顧客囲い込みが可能

・対求職者(ユーザー)側面でのメリットとしては、リアルタイム求職サービスの提供によって求職者と求人情報サイトが求職者のカレンダーを通じて継続的な繋がりを保つことになるため、安定した応募数の確保が可能

求職動向インデックスカレンダーによるアプローチ

求職側の求職スケジュールを統計的に処理し求職動向インデックスカレンダーとして求人側に提供することで求人活動の利便性を向上させると共に、求職動向分析情報の提供で効率的な採用計画の策定や効果的な広告制作を支援します。

また、求職動向分析情報は求人者が自らが利用するだけでなく、求人情報サイト営業社員がコンサルティング営業のツールとして活用することで売上UPを支援します。

求人側メリット

・月単位/週単位/日単位のカレンダーに求職動向情報を表示

・ドリルダウンによって期間別/地域別/職種別の求職動向情報を表示

・ドリルダウンまたは検索によって希望の案件を表示し直接オファーが可能

→今までは求職者側にしかなかった条件検索で希望の人材に直接オファー!

・求職動向分析情報を利用した特集記事の提供が可能(求人情報サイトにより記事作成)

→求職情報の月間/週刊/日刊天気予報

→この月のこの時期から、この地域で、この職種への希望が多く発生する模様

→この職種への応募者はこの時間帯勤務に希望が集中!

求人動向インデックスカレンダーによるアプローチ

求人側の求人スケジュールを統計的に処理し求人動向インデックスカレンダーとして求職側に提供することで求職活動の利便性を向上させると共に、求人動向分析情報の提供で効率的な応募計画の策定を支援します。

また、求人動向分析情報は求職者が自ら利用するだけでなく、求人情報サイト営業社員がコンサルティング営業のツールとして活用することで成約率UPを支援します。

求職側メリット

・月単位/週単位/日単位のカレンダーに求人動向情報を表示

・ドリルダウンによって期間別/地域別/職種別の求人動向情報を表示

・ドリルダウンまたは検索によって希望の案件を表示し直接オファーが可能

・求人動向分析情報を利用した特集記事の提供が可能(求人情報サイトにより記事作成)

→求人情報の月間/週刊/日刊天気予報

→この月のこの時期から、この地域で、この職種の求人が多く発生する模様

→この職種への応募は20時以降勤務が狙い目!

3.マーケティングの観点から見た当サービスの優位性について

オンデマンドプッシュ型アプローチ

オンデマンドプッシュ型アプローチとは、需要者と供給者のスケジュールを軸とした要件のマッチングにより両者の都合に沿った情報をリアルタイム配信する機能をコアとした、プッシュ型アプローチの新たな形です。

提供者都合の仕組である従来のプッシュ型アプローチに対し、利用者の要求を契機に開始される利用者都合の仕組であることから、オンデマンドプッシュと名付けました。

今回の適用例は、このオンデマンドプッシュ型アプローチであるリアルタイム求人/求職サービスを求人情報サイトの既存サービスに組み込み、更に求人/求職動向インデックスカレンダーで付加価値を高める隙のないソリューションによって、求人情報サービスの新たな方向性を示そうとするものです。

1.求人側と求職側それぞれのマイカレンダーから要件を提示(自動リクエスト)

2.マッチング結果の配信でサイトに誘導し相手情報を提示(プッシュ+プル)

3.マッチング結果以外の案件情報も併せて提示(クロスセル・アップセル)

4.求人/求職動向インデックスカレンダーによる情報提供で能動的な案件探しを後押し

5.能動的な案件探しにより当初のマッチング結果以外の相手にもオファー

6.オファーした相手とマッチング

2へ

このようにオンデマンドプッシュ型とプル型の組合せによるハイブリッド型アプローチとすることで、成約率の向上やユーザー数の維持拡大といった売上面での貢献に加え、広告コストの肥大化や消極的ユーザーの掘り起こしといったプル型アプローチ特有の課題も効率的に解決します。

従来型プッシュに対するオンデマンドプッシュの優位性

従来型プッシュ

・提供者都合で情報が送られ利用者都合が考慮されない仕組のため受容性が経時的に低下する傾向がある

・内容がその時点のニーズにマッチしていなかったり必要でない時に送られることが多いと認識された時点でゴミ箱仕分が決定

オンデマンドプッシュ

・利用者の要求によって利用者が指定する時期に利用者の要件に合致した情報のみが送られる仕組のため受容性を高く維持することが可能

・利用者が情報を必要とする時期が明確であるため、時間軸を中心としたクロスセルやアップセルが行いやすく高い効果が期待出来る

今まで:

『あなたの登録情報にマッチした求人が◯◯件あります』

これからは:

『あなたの来週のスケジュールにマッチした求人が◯◯件あります』

『あなたが来月希望されている就業開始時間を1時間後ろ倒しすることでマッチする求人がありますがいかがですか?』

『あなたが来週希望されている就業時間帯では他にもこのような職種の求人がありますがいかがですか?』

→ユーザーの最新のスケジュールにマッチした動的でリアルタイムなマッチング情報による、訴求力の高いプッシュが可能

4.その他機能およびメリット

計画信頼度開示機能

・求人者と求職者それぞれが立てた当初の求人/求職計画と実際の活動(オファー)との差異より算出した計画信頼度を開示することによって、対象者との成約可能性の判断を支援

取引信頼度開示機能

・求人者と求職者のマッチング後の対応について各種評価項目によって行われる相互評価の結果を開示することによって、不正利用や利用者モラルの低下を防止

職歴/採用実績開示機能

・求人者の採用実績と求職者の職歴を相互に開示することによって、ミスマッチを防止すると共にベストマッチへ誘導することで成約率を向上

5.実装例

当システムは求人側と求職側の要求を双方の都合に合わせてリアルタイムかつタイムリーにマッチングするための手段として、ユーザーインターフェイスにスケジューラーを採用しています。

御存知のとおりスケジューラーは常に時間軸を中心にコミュニケーションを行うツールであるため、リアルタイム求人/求職サービスのように時間の都合をマスト要件とするマッチングのUIとしては最も適した手段です。

また、スマートフォンに代表される携帯端末の爆発的普及によりスケジューラーは今や生活の一部となっているため、そのスケジューラーをインターフェイスとするサービスによって常にユーザーやクライアントと繋がることは、両者に対する継続的な囲い込みを意味します。

以下に、このスケジューラーをUIとして求人側と求職側のコミュニケーションを実現するための実装方法のイメージについてご説明します。

求人側UI実装

・当サービスを契約したクライアントの管理画面にリアルタイム求人サービス用カレンダーおよび求職動向インデックスカレンダーをUIとして追加

・求人者向け各機能をスマートフォン用に最適化したアプリをご提供

求職側UI実装

・当サービスの対象範囲となる求人情報サイトのユーザーマイページにリアルタイム求職サービス用カレンダーおよび求人動向インデックスカレンダーをUIとして追加

・求職者向け各機能をスマートフォン用に最適化したアプリをご提供

Dasieコア部実装

エンジン群とDB等から成るDasieのコア部を求人情報サイトのサーバー環境に実装します。

・言語解析エンジン——–形態素解析による要素抽出処理      (要素を取り出し)

・分類エンジン————–要素のジャンル分類処理                             (分類して)

・スケジュールエンジン–要素の時間軸展開処理                  (時間軸上に展開し)

・マッチングエンジン—–要素間の関係類推とマッチング処理          (紐付けて)

・リコメンドエンジン—–マッチング結果に基づくリコメンド処理  (オススメ)

6.CRMとの連携による更なる効果について

Dasieは、企業の社内システムにおける運用ではCRMシステムとの連携も想定しています。

連携によって得られる更なる効果についてご案内します。

マーケットのパワーバランスの変化への対応

マーケットに新たなビジネスモデルが台頭する時、このことにより当該マーケットにおける売り手と買い手のパワーバランスの変化を察知出来ることがありますが、これをネット求人情報サービス業界で見た場合、ジョブセンスに代表される祝い金還元式成功報酬型モデルの台頭から当業界の変化の兆しが見て取れます。

ジョブセンスの場合、業績を伸ばした要因としてひとつには成功報酬型という買い手(求人者)への価値提供による効果がありますが、その一方で祝い金の支給という売り手(求職者)への価値提供を同時に果たしており、この効果による売り手(求職者)の確保がこのビジネスモデルの成功の鍵と言えます。

弊社ではこれを、買い手側へのエージェントサービスが主流であった求人情報サービス業界における、売り手側エージェントとしての市場要求の高まり、即ち売り手と買い手のパワーバランスの変化と捉えています。

このパワーバランスの変化に対応するには求人側のみならず求職側も顧客として捉えることの出来る新たな観点の顧客管理が必要であり、そのためには属人的な手法では対応が困難な求職側のフォローをシステム化で担保する必要があります。

これを実現するのがDasieとCRMの連携による顧客管理アプローチです。

求人側と求職側を同列の顧客として扱うことで、双方に対してより付加価値の高い提案を行うコンサルティング営業が可能となります。

Dasie + CRM によるベストプラクティス

・APIによるリアルタイム連携で求人側と求職側の動向やニーズを把握することにより、両者への的確かつ適時のフォローが可能

・Dasieに蓄積されたマッチング実績情報の利用により、成約確立の高い効率的な提案が可能

・Dasieに蓄積された求人側と求職側双方の動向分析情報の利用により、短期から長期までの採用/応募計画の提案が可能

7.最後に

今打つべき一手  ~成功報酬型の次に求められるもの~

求人情報サービス各社における祝い金還元式成功報酬型の導入が進めば、このモデルがもたらす差別化による優位性は低下します。

その中で優位性を見出すためには求人側からの収入を減らすか求職側への支出を増やすかの選択しかないため、やがてはコスト競争となりサービス提供側にとってのメリットは見出し難くなることが予想されます。

また、祝い金還元式成功報酬型がスタンダードとなることで労働市場、特にアルバイト市場では就業スパンの短期化により労働力の流動化に拍車がかかることが予想されます。

となれば次にするべきは、労働力の流動化に対応した新しい利便性の提供による差別化です。

リアルタイム求人/求職サービスは、求人側と求職側のスケジュールを中心としたマッチングによって時間効率の最大化を追求したサービスであることから、まさに労働力の流動化に対応した新しい利便性の提供であり、競合サイトに対する最強の差別化戦略であると考えます。

 

※本製品(Dasie:仮称)に関する基本技術は、特許協力条約(PCT)に基づく国際特許出願として出願済です。

従いまして当適用例に記載の適用方法および想定機能の一部または全部は、特許請求の範囲に含まれる可能性があります。

2016年12月時点において、日本では8件の特許を維持しており、米国、インド、中国では国内移行手続を完了しています。